アイデア発想モデル / 10社126名の実証検証

別領域」と
組合せるための、
アイデア発想モデル。

イノベーションは「新しい結合」から生まれる——そう言われても、何と何を組合せればいいのかは誰も教えてくれません。 AYモデルは、アナロジー思考で「遠い領域」にたどり着き、大喜利の問いの型で「組合せ」を起動する、手順化されたアイデア発想モデルです。

10社実証実験ワークショップ
126名主観評価アンケート回答
3.94/5新規性・柔軟性の平均
01 / PROBLEM

アイデア出しの現場で、いつも起きていること

発想手法はすでにいくつもあります。それでも現場では、同じ壁に繰り返しぶつかります。 以下は、実証実験ワークショップの被験者アンケート(自由記述)で実際に挙がった声とその割合です。

ブレスト

結局、いつもと同じ発想に着地する

結束の高い組織ほど、意見の一致を求めて代替案の検討が甘くなる「集団浅慮」が起きます。地位への遠慮も働き、尖ったアイデアは口に出される前に消えていきます。

Iyengar(2023)/Jones & Roelofsma(2000)
2軸図

軸の設定が難しい

「軸さえ決まれば強い」手法ですが、どんな変数を置けばよいかのガイドは体系化されていません。軸の良し悪しで、出るアイデアの質がそのまま決まってしまいます。

否定的回答 45%(10/22人)・開発者自身も今後の課題と明言
バリューグラフ

整理はできるが、新しくならない

上位目的の可視化には向く一方、そこから新しいアイデアをどう出すかの手順がありません。「代替案」は出ても「別領域」までは届きにくいのが実態です。

「新しいアイデアの発想には難しい」約43%(12/28人)
生成AI

AIに聞いても、ありきたりな答えが返る

LLMは「情報を集める」ことは得意でも、「何と何を組合せるか」の判断は不得意です。テーマだけを投げると、平凡な答えが返ってきます。

鈴木・吉岡(2024)
組織

物議を醸すアイデアは言い出せない

人は基本的に保守的で、大きな変化を直感的に受け入れがたく感じます。「どんなアイデアでもOK」と伝えても、論争を呼びそうな案は無意識に避けられます。

前野(2014)
手順

「自由に発想して」が一番難しい

創造的なアイデアを誘発するには「想定外の制約を付した問い」が有効とされます。しかし、その問いの作り方自体が体系化されていませんでした。

安斎・塩瀬(2020)

数字で見ると、こうなります

事前検証で、ChatGPTにテーマだけを渡して出したソリューションのうち、第三者評価で新規性が平均5点以上(7点満点)だったものは 0%(4件中0件)。一方、AYモデルで導いた「組合せ」の要素を添えて指示した場合は 40%(113件中45件)でした。差を生むのは、AIの性能ではなく「何を組合せるか」の設計です。

02 / BACKGROUND

イノベーションの条件は、100年前から「組合せ」だった

「別領域」の要素同士を「組合せ」た、新規で有用なもの——創造的なアイデアの定義は、時代を超えてほぼ一致しています。 問題は、その定義を手順に落とした発想手法が乏しいことでした。

イノベーションとは、新規の、もしくは既存の知識・資源・設備などの新しい結合である。

シュンペーター『経済発展の論理』(1977)

発明とは、無益な組合せを排除して、ほんのわずかしかない有用な組合せをつくることである。

アンリ・ポアンカレ『科学と方法』(1913)

新しいものごとは、それらをつくる要素が新しいのではない。要素を組合せる方法が新しいのだ。

シーナ・アイエンガー『Think Bigger』(2023)

既存手法は「別領域」と「組合せ」のどちらかが欠けている

本研究では、この2要素を軸に既存手法を整理しました。AYモデルは、バリューグラフの「別領域を探す力」と、2軸図の構造シフト発想法の「組合せる力」を1つの手順に統合したモデルとして設計されています。

手法「別領域」に届くか「組合せ」を促すか残る課題
ブレインストーミング 参加者の知識次第 仕組みはない 集団浅慮・同質化。地位への遠慮。
バリューグラフ
石井・飯野(2011)
上位目的から代替案へ × 直接促す仕組みが不足 要素抽出に留まり、発想に繋がりにくい。
2軸図の構造シフト発想法
今泉ら(2014)
軸の設定次第 構造化で枠を超える 軸の設定方法が体系化されていない。
Think Bigger
Iyengar(2023)
探索は当事者の好奇心任せ 領域内外の事例を組合せ 「別領域」への到達手順がない。
AYモデル アナロジー思考で抽象度を上げる 大喜利の2要素お題で起動 所要時間が長い(→ 生成AIで補助)。

なぜ、いま創造性なのか

経済産業省は、答えが不明確な問題や変化の激しい状況に対応し新規事業を創出するために「創造性」を重視しています。 『中小企業白書2024』でも、ニーズの細分化・複雑化と予測困難性の高まりに伴い、技術シーズを機動的に新規事業へつなげる中小企業のイノベーション活動の重要性が高まっていると記されています。

発散フェーズに絞って設計している

イノベーションのプロセスは、フィールドワーク/プロトタイピング/アイデア創出を行き来しながら進みます。 AYモデルが担当するのは、そのうちアイデア創出の「発散」だけ。収束と評価は人間が現実的な判断を下す前提です。

03 / THEORY

AYモデルの中身:アナロジー思考 × 大喜利の問い

AYモデルの名前は Analogy(アナロジー)と Yattemiyou(やってみよう)の頭文字です。 「別領域にたどり着く構造」と「組合せを起動する問い」という、性質のちがう2つの部品でできています。

① 抽象化のはしごを登ると、遠くへ行ける

アナロジー思考とは、ある領域の関係構造を、類似した別領域の関係構造に結びつける思考です。 細谷(2023)は「抽象化度が高いほど、遠い領域からアイデアを借りてくることができる」と述べています。 AYモデルでは、より抽象度の高い共通点から導かれた別領域を「距離が遠い」と表現します。

抽象度:高 / 距離:遠い
抽象 a-3 分けて配分するもの 予算・組織
抽象 a-2 無形で何かを収納するもの PCのフォルダ
抽象 a-1 有形で何かを収納するもの 本棚・物置
出発点 かばん
抽象度:低 / 距離:近い

細谷功(2023)『アナロジー思考』をもとに作成

② 大喜利の「2要素お題」が、組合せを起動する

安斎・塩瀬(2020)は、ファシリテーターが「想定外の制約」を付した問いを投げると創造的なアイデアが誘発されると示しました。 ただし、その問いの作り方は体系化されていません。そこでAYモデルは、大喜利の2要素お題を型として借りてきます。

〇〇みたいな××
どんなの?

この型に、抽象化して取り出した A側の要素と B側の要素を代入するだけで、 「想定外の制約を付した問い」が誰でも機械的に作れます。テーマを「A:目的」と「B:対象物」の2つに割る発想も、この2要素お題から来ています。

③ 使い方は7ステップ

  1. テーマを「A:目的」「B:対象物」に分ける例:A=読みたくなる/B=社内メッセージ
  2. Aの抽象度を上げて a-1 に書く例:見やすく学びになる
  3. a-1 の具体例を A-1 に書く例:漫画
  4. さらに抽象度を上げて a-2 → A-2 へ例:モチベーションUPする → (具体物)
  1. A-3 まで繰り返す例:a-3=感動がある → A-3=ドキュメンタリー
  2. B側も同様に b-1〜b-3/B-1〜B-3 を埋める例:b-3=必ず見ないといけない → B-3=時計
  3. 「〇〇みたいな××、どんなの?」に代入して発想する例:「ドキュメンタリーみたいな時計、どんなの?」

実際に出たアイデア:「タイムリミットメッセージ」

A-3「ドキュメンタリー」× B-3「時計」の組合せから、 「〇時間〇分〇秒後に発表が始まります!」とカウントダウン形式で埋め込む社内メッセージが発想されました。 時計の「時間制約」とドキュメンタリーの「物語性」を組合せ、“時間が迫る感覚”で行動を促す設計です。(実証実験ワークショップでの発想例)

④ 生成AIとの役割分担

鈴木・吉岡(2024)は、LLMは状況に類似した事例の情報を集めることは得意である一方、第一原理に基づく複数の知識を組合せて問題を解くことは必ずしも得意ではない、と指摘しています。 AYモデルは、このLLMが不得意な「何を組合せるか」を人間側で決めるための道具です。

🧑 人間がやること

  • テーマを A:目的 / B:対象物 に割る
  • 抽象化して「遠い別領域」を取り出す
  • どの組合せを試すか決める
  • 出てきた案の収束・評価・リスク判断

🤖 生成AIに任せること

  • 決まった組合せからの具体案の展開
  • 組合せパターンの網羅的な一覧化
  • 発想の時間短縮(1分あたり1案)

※ 西野(2023)は、生成AIとの協働に必要な能力として「リスク管理力」「批判的思考力」を挙げています。AIの出力は鵜呑みにせず、収束・評価フェーズでは人間が現実的な判断を下すことが前提です。

04 / TOOL

AYモデル Webツール

A:目的 と B:対象物 を入れて、抽象化のはしごを登り、4×4の組合せマトリクスから問いを選ぶ——AYモデルの手順をそのままブラウザに載せました。 入力内容はこの画面の中だけで処理され、どこにも送信されません。続きをやるときはJSONで書き出して読み込めます。

ソリューションアイデアマトリクス

STEP 1

テーマを2つに割る

「〜な〜」の形にすると割りやすくなります。例:「読みたくなる社内メッセージ」「また来たくなる観光地

STEP 2

抽象化のはしごを登って、具体物に降りる

左に「抽象(なぜ? どうなったら?)」、右にその「具体物(たとえば?)」。下から上へ、だんだん抽象度を上げるほど遠い別領域に届きます。目安は10分。

A:目的 の抽象化

💡 上に行くほど「AでもBでもない何か」に近づきます。無理に埋めず、思いついた段まででも構いません。

B:対象物 の抽象化

💡 「動詞+目的語」で機能を書くと抽象化しやすくなります(例:情報を伝える)。

STEP 3

組合せマトリクスから、問いを選ぶ

セルをクリックすると「〇〇みたいな××、どんなの?」の問いができます。中心(左上)から遠いセルほど、遠い別領域の組合せです。目安は10分。

未検討 選択中 アイデア記録済み 距離の目安:近い / ふつう / 遠い
STEP 4

問いに答える/AIに展開してもらう

上のマトリクスからセルを選んでください

選んだ2要素が、この問いに代入されます。

生成AIに貼るプロンプト

(セルを選ぶとここに表示されます)

まだアイデアはありません。1つ出たら「やってみよう」——組合せを変えて何度も回すのがAYモデルの使い方です。

※ 入力内容はブラウザのメモリ上でのみ保持されます。ページを閉じると消えるため、続きがある場合は「JSONで保存」してください。生成AIへの入力は各サービスの利用規約に従ってください(社外秘情報の取り扱いにご注意を)。

05 / EVIDENCE

10社126名で検証しました

製造業・IT・印刷・観光・人材サービスの計10社、中小企業から大企業まで。被験者は1つのテーマに対し、 ブレインストーミング/バリューグラフ/2軸図の構造シフト発想法/AYモデルの4手法すべてを実施し、同じ6項目で5段階評価しました。

10実証実験ワークショップ実施企業
126主観評価アンケート回答者
3.94AYモデルの新規性・柔軟性(5点満点)
4手法同一テーマ・同一被験者で比較

6つの評価項目すべてで、AYモデルが最高値

被験者アンケートの主観評価・平均値(5段階評価)。AYモデル N=126、ブレインストーミング N=104、他 N=126。

横軸は 2.8〜4.0 の範囲を表示しています(5段階評価の全レンジではありません)。各点にカーソルを合わせると手法名と値が出ます。正確な値は「表で見る」をご覧ください。

vs ブレインストーミング
項目BSAYp値
新規性3.573.94*0.008
流暢性3.463.750.121
柔軟性3.433.94*0.001
独自性3.043.77*0.000
実現可能性3.443.600.512
論争性3.193.77*0.000
vs バリューグラフ
項目VGAYp値
新規性3.133.94*0.000
流暢性3.153.75*0.000
柔軟性3.183.94*0.000
独自性2.993.77*0.000
実現可能性3.253.60*0.003
論争性3.043.77*0.000
vs 2軸図の構造シフト発想法
項目2軸図AYp値
新規性3.683.94*0.024
流暢性3.643.750.375
柔軟性3.653.94*0.017
独自性3.363.77*0.001
実現可能性3.473.600.254
論争性3.253.77*0.000

Welchのt検定(等分散を仮定しない)による両側検定。* は p≦0.05(有意差あり)。 プロセス順序による分散の差がF検定で一部確認されたため、Welchの方法を採用しています。

正直に言うと、数を出す速さでは負けます

1分あたりの発想アイデア数(5社平均)。AYモデルは1案の発想に平均20分(要素抽出10分+組合せ10分)を要します。

※ 2軸図の構造シフト発想法は、ブレインストーミング10分で出たアイデアを既出アイデアとして利用しています。

量ではなく、質が要るときの手法

AYモデルが時間を要するのは、バリューグラフ相当の「別領域の抽出」と、2軸図相当の「組合せ」という2つのステップを内包しているためです。 この結果は、アイデアの数より質が重視される場面でAYモデルが有効であることを示唆します。

そして、2要素さえ出せてしまえば組合せの展開はChatGPTに任せられます。実際、生成AIの補助を使えば1分あたり1案まで短縮できました。

自由記述にあらわれた特徴

AYモデルへの好意的な回答は「組合せで多視点のアイデアが出そう」34%(14/41人)、「他の参加者の要素とも組合せてみたい」10%。 否定的な回答は「抽象化させるのが難しい」20%(8/41人)でした。

「他の方法では出ない発想が得られた」

実証実験ワークショップ 自由記述

「尖ったアイデアが出やすく、発想の停滞が軽減された」

実証実験ワークショップ 自由記述

「全く異なる視点から考えることで発想が転換された」

実証実験ワークショップ 自由記述
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企業ごとにテーマを固定し(テーマ差の影響を除外するため)、実施順序は入れ替えて検証しました。 なお本研究は主観評価にもとづくもので、発想されたアイデアの第三者による客観評価は今後の研究課題です。

06 / TIPS

うまく回すためのコツ

実証実験でつまずきやすかったポイントと、その対処法をまとめました。

TIP 01 つまずき No.1

抽象化は「問いの言い換え」で乗り切る

「抽象化させるのが難しい」は最多の否定的回答(20%)。抽象化しようと構えるより、上下に動く問いを口に出すのが近道です。

  • 上へ(抽象):「なぜそれが要る?」「どうなったら嬉しい?」
  • 下へ(具体):「たとえば?」「世の中で一番それっぽいものは?」
  • 「動詞+目的語」で機能を書く(例:情報を伝える/時間を区切る)
  • 有形 → 無形 → 概念、の順に上げていくと迷いにくい
TIP 02 距離

遠いセルから試す

抽象度が高いほど遠い別領域に届き、遠い要素同士の組合せほどイノベーティブなアイデアになる、というのがAYモデルの仮説です。 中心に近いセル(A×B)は既知のアイデアになりがち。まずマトリクスの右下、A-3×B-3から手をつけてみてください。

TIP 03 時間配分

10分+10分を守る

要素抽出に約10分、組合せの発想に約10分。この20分がAYモデルの標準です。他手法(各10分)より長いぶん、時間を計って区切らないと抽象化で沼にはまります。 途中で埋まらない段があっても、埋まったところから組合せに進んで構いません。

TIP 04 AI活用

プロンプトは、これだけでいい

凝ったプロンプトは不要です。実証で使ったのは次の一文だけ。

  • 「〜についてのソリューションを考えています。「〇〇」と「××」の要素を入れてください

大事なのは文言ではなく、入れる2要素を人間が決めていることです。

TIP 05 注意

実現可能性は、この段階で気にしない

AYモデルは実現可能性でだけ有意差が出ませんでした(vs ブレスト p=0.512、vs 2軸図 p=0.254)。 別領域から来たアイデアは、技術・予算・時間の制約が考慮されにくいためです。発散フェーズでは制約を一旦外し、 収束と評価は人間が現実的に判断する——この分担を崩さないでください。

TIP 06 場づくり

複数人で、他人の要素も借りる

1人1枚のワークシートで進めたうえで、出そろった要素を全員で見せ合うと組合せの母数が一気に増えます。 実証でも「他の参加者の要素とも組合せてみたい」という声が10%ありました。 組合せから出たアイデアは「間接的なアイデア」として認知されるため、心理的な所有感が弱まり、 突拍子もない案も場に出しやすくなります。

TIP 07 くり返す

「やってみよう」を1回で終わらせない

AYモデルのYは「やってみよう」。抽象化のやり直し、要素の入れ替え、組合せの総当たり—— 1回で完成させるのではなく、フィードバックを受けて何度も回す前提の手法です。 出たアイデアの要素を、さらに次のAYモデルの入力に使うこともできます。

TIP 08 前提

AIの答えを鵜呑みにしない

生成AIとの協働には「リスク管理力」「批判的思考力」が要ります(西野 2023)。 AIが出した案は刺激剤であって結論ではありません。実証でも、ChatGPTのアイデアから刺激を受けた被験者が 新たに自分のアイデアを発想する様子が確認されました。AIの案を出発点に、人が考え直すのが正しい使い方です。

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